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横浜家庭裁判所 昭和50年(家)3655号 審判

申立人 原田豊(仮名)

未成年者 久保健二(仮名)

主文

未成年者の後見人に申立人を選任する。

理由

本件および当庁昭和五〇年(家イ)第一〇九五号親子関係不存在確認申立事件記録中の資料、家庭裁判所調査官の調査結果ならびに関係人審問の結果を総合すると、未成年者は戸籍上本籍横浜市○○○区×××町○○番地久保和夫(昭和四年一月二七日生)と同人の妻であつた亡原田啓子(大正一三年六月二日生)間の三男として記載されているが、真実はそうでなく、原田啓子と申立人間の婚姻外の子であること、すなわち上記久保和夫と啓子は昭和二八年頃から同棲生活をしていたが、昭和三三年四月一九日その間に第一子博司が出生したため、同年五月二日婚姻届出をし、その後同三五年一一月二二日二男勝が出生したこと、ところが同女は同三七年夏頃から知人の申立人と秘かに親交を重ねるようになり、同年一〇月頃夫である上記久保和夫に無断で上記二子を置いたまま家を出て申立人と同棲生活を開始するに至つたこと、そして同女は同三九年二月二八日未成年者を出産したが出生届出をしないまま経緯し、その後昭和四三年七月八日同女と前記久保和夫の協議離婚届出がなされ、同四五年二月一八日に至つて申立人と上記啓子は婚姻し、同時に未成年者の出生届出をしたが、未成年者が啓子の離婚前の子であつたため久保和夫と啓子間の嫡出子として戸籍記載されたこと、しかしながら同人は啓子の家出以来同女と会つたことも生活を共にしたことも全くなかつたこと、申立人と啓子および未成年者はその後も引き続き共同生活を営んでいたが、昭和五〇年七月一〇日啓子が死亡したこと、そこで申立人は未成年者の戸籍記載を正しくするためとその監護教育の必要から本件申立に及んだこと、の各事実が認められる。

以上の事実によれば未成年者は民法七七二条の推定を受けない、前記啓子の婚姻外の子であるから戸籍上の記載如何にかかわらず母たる啓子の親権に服していたものであり、従つて同女の死亡により親権を行う者がなくなつたから後見が開始したものと解される。

申立人は認知をしていないものの未成年者の実父であり、後見人の欠格事由もなく現に生活を共にしているものであるから未成年者の後見人として適切である。

よつて主文のとおり審判する。

(家事審判官 村田長生)

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